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クラシル|社内の7割が使うデータ基盤を、データチーム2人で回すためにやったこと

作成日: 2026-08-08 出典 / きっかけ: KOH(吉川昂太)/ クラシル株式会社、SpeakerDeck(2026-08-07 登壇) 関連: 意味層_enforced_cube_dbt_looker_整理 / 10x_data_contracts_データマネジメント_整理 / タイミー_dre_looker_adk_社内aiエージェント_整理 / メルカリ_socrates_データ基盤とマルチエージェント_整理 / ミラティブ_ashura_分析民主化aiエージェント基盤_整理 / aiエージェント時代のデータ基盤論争_意味層は要るか_整理


0. 要点(3行)

  • 人を増やさず「所有権を配る」: データエンジニア2人で社内7割が使う基盤を回す解は、中央集権をやめ Data Owner モデル(意思決定する人=そのデータの持ち主)で dbt モデルを利用者自身に作らせたこと。
  • 効かせる要は「Tier で信頼度を階層化」: Tier1-2=厳格管理のコア指標、Tier3=自由なアドホック。ただし野放しの Tier3 はカオス(アドホックの連鎖参照)を生んだので、基準を満たしたものだけ Tier3 ssot_verified に昇格させ、AI が参照してよいのはそこだけにした。
  • 核心の教訓: 「AI-Ready でも、モデル/メタデータをきちんと整備して正しく SSoT にしていくのが近道」。AI エージェント(Claude+MCP)は魔法ではなく、下地の意味整備があって初めて効く。cf. aiエージェント時代のデータ基盤論争_意味層は要るか_整理

1. 課題 — 2人 vs 社内7割

  • 利用者(∝依頼数)が多く、データエンジニアが足りない、という典型構造。「利用者(∝依頼数)が多く、それに対してデータエンジニアが足りない」。
  • 社内の約7割が使う基盤を、データエンジニア2名で運用し続ける必要がある。
  • 素直に人を増やす/全依頼を中央チームが捌く、はスケールしない → 運用モデルそのものを変えた

※ 「7割」「2人」は登壇者の自社事例としての数値。


2. 中核 — 3本柱

2-1. Data Owner モデル(所有権を業務側へ配る)

  • 全作業を中央集権化せず、業務ステークホルダ(主に PdM)にデータ所有権を割り当てる
  • 意思決定する人が、そのデータの持ち主になる」。Data Owner がデータ品質・ビジネスメタデータ・ガバナンスに責任を持つ。
  • 社内の SQL 利用者・認可された開発者が dbt モデルを自分で作る(セルフサービス化)。

2-2. Tier システム(信頼度で階層化)

モデルを重要度で分類し、信頼できるものとアドホックを混ぜない

Tier 位置づけ 扱い
Tier 1-2 コア指標 厳格に管理
Tier 3 アドホック 柔軟。ただし野放しにすると危険
Tier 3 ssot_verified 基準を満たしたアドホック AI が参照してよいのはここだけ
  • 制約なしの Tier3 は「カオスが生まれた」— アドホックがアドホックを参照する連鎖などのアンチパターン。
  • 対策として Tier3 ssot_verified(特定基準クリアで昇格)を新設し、AI エージェントの参照対象をそこに限定。信頼できる SSoT だけを AI に見せる。

2-3. AI エージェント+評価(Claude+MCP)

  • エージェントが利用者に適切なモデルを先回りで提案し、用語を統一、アドホックな選択を監視。
  • 2種類の評価を回す:
  • モデル選択の正確性(正しいモデルを選べているか)
  • クエリロジックの正しさ(SQL の中身が正しいか)
  • 👍/👎 フィードバックを全利用者から収集(感情スコア+自由記述の説明文の両方)。改善ループの燃料にする。
利用者の質問
AIエージェント(Claude + MCP)
   ├─ 適切なモデルを先回り提案(参照は Tier3 ssot_verified 以上に限定)
   ├─ 用語を統一・アドホック選択を監視
回答 → 👍/👎+自由記述 で評価収集
   └─ ①モデル選択精度 ②クエリロジック正しさ を継続評価 → 改善ループ

3. 技術スタック

レイヤ 採用
変換(Transform) dbt
DWH Snowflake
BI / 可視化 Lightdash(dbt 連携の OSS BI)
AI エージェント Claude
ツール接続 MCP(Model Context Protocol)

4. 成果と残課題

うまくいっていること - 「2名しかいないデータチームでも運用し続けられている」。 - 高いアジリティを維持。

残る課題 - チーム間で採用度合いにムラがある。 - 似たモデルの重複が起こりうる。 - どのモデル/指標を使うべきか利用者が混乱しうる。


5. 核心的教訓

AI-Ready でも、モデルやメタデータの整備をきちんとして、正しく SSoT にしていくことが近道!

  • AI エージェント導入は「整備をサボる免罪符」ではない。むしろ AI に正しく参照させるための SSoT 整備(Tier 昇格基準) が本体。
  • 所有権の分散(Data Owner)× 信頼度の階層化(Tier)× AI の参照範囲限定、の3点セットで「少人数運用」と「品質」を両立させている。

6. まとめ — この事例から持ち帰る手(+他社比較)

状況 借りる手
データエンジニアが依頼数に対して不足 中央集権をやめ Data Owner(意思決定者=所有者)へ dbt を委譲
セルフサービスでアドホックが乱立・カオス化 Tier で信頼度を階層化し、基準クリアのみ ssot_verified に昇格
AI エージェントに社内データを触らせたい 参照対象を検証済み SSoT に限定+モデル選択/クエリロジックの2軸評価+👍👎ループ
「AI 入れれば整備は要らない」と思いがち 逆。メタデータ/SSoT 整備こそ近道

他社事例との位置づけ: 「分析民主化+AI エージェント」は各社が模索中。ミラティブ Ashura(ミラティブ_ashura_分析民主化aiエージェント基盤_整理)、メルカリ Socrates(メルカリ_socrates_データ基盤とマルチエージェント_整理)、タイミー DRE(タイミー_dre_looker_adk_社内aiエージェント_整理)が近い。クラシルの固有性は 「Tier×AI参照範囲の連動」と「2人運用」という制約下での割り切り。意味層/契約の議論は 意味層_enforced_cube_dbt_looker_整理 / 10x_data_contracts_データマネジメント_整理 と接続する。

一言で: 「人を増やす」でも「AI に丸投げ」でもなく、所有権を配り・信頼度を階層化し・AI の参照を検証済み SSoT に絞る。少人数でスケールさせる型として筋がよい。


参考リンク

  • 原典(SpeakerDeck, KOH/吉川昂太, クラシル, 2026-08-07) — https://speakerdeck.com/koh_yoshi/she-nei-no7ge-gashi-udetaji-pan-wo-detatimu2ren-dehui-sutameniyatutakoto
  • Lightdash(dbt 連携の OSS BI) — https://www.lightdash.com/
  • dbt — https://www.getdbt.com/ / Snowflake — https://www.snowflake.com/

作成: 2026-08-08 / 最終更新: 2026-08-08