コンテンツにスキップ

Claude Fable 5 公開中の3日間で300万円を課金した話(並列エージェント運用の物理的課題)

出典: 沖山 翔(アイリス Aillis CEO、東大医学部卒・救命救急医→2017年アイリス創業)。 X article / note.com、2026-06-27。 Fable 5 は2026-06-10(JST)公開、約3日後に米国の輸出規制で利用停止。その3日間で Anthropic 課金が約300万円(ピーク1日120万円ペース)に。

要点(一言で)

数十〜百体のエージェントをほぼ24時間並列で回すと、ボトルネックはソフトではなく物理側(発熱・電力・ネットワーク・計算資源・コスト・人間の入出力)に移る。Fable 5 で1セッションの自走時間が伸びた → 1人がさばける同時セッション数が増えた → 課金が跳ねたという因果。記事の主眼は金額ではなく、各物理課題への対処。

エージェントの階層と作業環境

  • MacBook Pro 上で Claude Code を同時8〜10セッション。各セッション=メインエージェント1体、各メインがサブエージェントを5〜最大100体コール。全体で数体〜百体が同時稼働。
  • タスクに応じて OpenClaw / Hermes / Local LLM も並列。
  • PC 1台で抱えきれず、MacBook Pro をハブに Mac mini 2台+産総研スパコン ABCI へ SSH で負荷分散。

課題と対処

課題1: 発熱(正規ファンでも CPU 100°C超)

  • 数十体回すと CPU/GPU が上限張り付き、サーマルスロットリングで全体が遅くなる。Performance Core は90〜100℃。
  • 対処: ①TG Pro で各コア温度を常時監視しファンを手動で最大固定(標準制御は上がりきってからしか回らない)。②負荷を1台に集約せず Mac mini へ逃がし、重い並列GPU計算は ABCI へオフロード(=熱生産の物理分散)。

課題2: 電力(供給が消費に負ける)

  • セッション増+Local LLM+外付けディスプレイ6面で消費電力増大。正規アダプタでも供給が追いつかず、電源なしだとフル充電でも1時間で100%→0%
  • 対処: アクティビティモニタで電力監視+複数筐体に分散(=必要電力の分散)。移動時は Anker の大型モバイルバッテリー2台持ち歩き。

課題3: ネットワーク/セキュリティ(自律エージェントの隔離)

  • 自律性が高い OpenClaw は暴走・情報吸い出しリスク。
  • 対処: ノード間は Tailscale 越し SSH で MacBook Pro → Mac mini を一方向に限定(Mac mini から MBP は取りに行けない)。OpenClaw は会社でも個人でもない専用アカウントで隔離。行動範囲をネットワーク・アカウント・専用筐体の3方向から物理的に絞る。

課題4: 計算資源(スパコンを間借り)

  • ローカルGPUでは並列計算が頭打ち → ABCI(産総研、NVIDIA H200 6000枚)に重い並列計算をオフロード。

課題5: 青天井のコスト

  • 自動チャージはオフ、残高が尽きるたび手動で$1,000ずつチャージ。Fable 5 だとみるみる溶け、請求履歴が「$1,100 Paid」で埋まる($1,000+消費税10%)。以前あった「1000ドルで30%おまけトークン」は今は無し。
  • 一般論としての対処: 自動チャージOFF+月額上限設定(チャージのたび「本当にもう$1,100払うか」を自問できるブレーキ)。全部を最上位モデルに振らない。こまめな /compactHANDOFF.md 作成+新規セッション移行

課題6: 人間側のボトルネック

  • 数十体の進捗を1人で見張るには画面も入力も足りない。
  • 物理投資: 分離キーボード、親指シフト、AR/VRグラス7種、ディスプレイ6面(本体+外付け)、入力はピンマイク+キーボード+フットペダル+リング(手をキーから離さず操作追加)。移動中は Even Realities G2+R1、Pixel Fold Pro 10 の pic-in-pic(3画面)。Pixel Buds Pro 2 を5セット、右耳=MBP/左耳=携帯+骨伝導で聴覚インプットを3系統

ループエンジニアリング=お手玉

  • 前提は「エージェントができるだけ長時間自律で作業すること」。5分毎に話しかけていては回らない。
  • 沖山氏の実装: 社内 Slack/Notion/Salesforce を BigQuery に集約 → CI修復・テスト補完・ログ巡回・GA4/DataDog経由の改善提案を定期起動してエージェントに検証させ、結果を markdown で出力して他セッションと共有
  • Fable 5 で1回あたりの滞空時間が延びる → 同時に扱えるお手玉(セッション)が増える。これがピーク1日120万円ペースの正体。
  • 参考: ループエンジニアリングはフリークアウト本田氏の解説記事が分かりやすい、とのこと。

余談: tokenmaxxing と tokenminimaxing

  • ジェンスン・フアン(NVIDIA CEO, GTC2026/All-In):「年収50万ドルのエンジニアが年間で最低でも25万ドル分のトークンを使っていなかったら心底ぞっとする」。
  • Meta 社内で消費量ランキング「Claudeonomics」が回り、消費多者は Token Legend の称号で人事評価UP → 無意味ループで円周率を延々計算するハックが横行 → 反動で「ただ燃やすマキシング」から「成果に効かせるミニマキシング」へ揺り戻し。消費量は成果の代理指標ではない
  • 関連: OpenClaw 開発者 Peter Steinberger、r.kagaya「どうすれば月2億円分のトークンを燃やせるのか」。

おわりに / 示唆

  • 300万円は大支出だが事業進捗でROIは十二分。初参戦 Kaggle でシルバーメダル(上位入賞)。「思いついた仮説を片端から実験=試行回数で殴る」。人間が1本ずつ手で試すのと検証数が変わる(AIコンペも事業も同じ)。

自分へのメモ

  • コスト面は ../architecture/AI支出を横ばいに保つ_デフォルト_ルーティング_キャッシング と表裏。あちらは「組織でコストを横ばいにする仕組み(デフォルト/ルーティング/キャッシング)」、こちらは「個人が振り切って燃やしたときに出る物理制約」。両方とも結論は最上位モデルに全振りしない・compact/HANDOFF・コンテキスト最小化で一致。
  • 自分の Temporal / Claude Code 無人運用にも効く: 自走時間を延ばす(HANDOFF.md・状態ファイル=../../../../research-orchestrator や long-task スキルの発想)と、扱える並列数が増える。一方で「消費量≠成果」を可視化側で押さえる。

作成: 2026-06-27 / 最終更新: 2026-06-27