全エンジニアのAI活用状況を可視化する — Looker × サーベイで現在地を測る¶
作成日: 2026-06-27 出典 / きっかけ: 野間由貴(株式会社ラクス 開発管理課)「全エンジニアのAI活用状況を可視化する〜Lookerを用いたアンケート分析と今後の推進策〜」RAKUS AI Meetup Vol.2(2026-01-21) https://speakerdeck.com/rakus_dev/visualizing-ai-adoption-across-engineering 関連: ai駆動開発ループ_interview-dev-loop_整理 / 社内mcp共通基盤_認証認可ログ_整理
0. 要点(3行)¶
- 「AIネイティブの理想を定義する」のをやめ、300人超の現在地把握に振り切った事例。技術進歩が速すぎて理想がすぐ陳腐化するので、目標設定より先に「いま全員がどこまで使えているか」を測る、という順序の転換が肝。
- サーベイを People(ヒト属性)/ Things(18の開発工程ごとの実態)/ Feelings(自己評価・環境整備度・AI貢献割合) の3軸で設計し、Google Forms で配信。リマインド戦略で回答率96%。Looker Studio で属性の偏り・プロダクト横断比較・俯瞰ページを可視化。
- 計測して終わりにせず、トップランナーと一般層のヒアリングで「打ち手の優先順位」を付けるところまでやる。定量で当たりを付け、定性で解像度を上げて Quick Wins / Systematic に振り分ける。
1. 背景 — 「理想定義」の壁と戦略転換¶
- 当初は「AIネイティブ開発とは何か」の理想像を定義しようとした。が、技術進歩が速く定義した瞬間に陳腐化。組織内で「目指すべきレベル感」も人によってバラバラで合意できない。
- → 理想追求をやめ、「現在地把握」に軸足を移した。これがこの発表の最大の学び。完璧な目標定義より、まず全員の実態を可視化したほうが組織は動きやすい。
着眼: 自分の文脈(無人ループ・ハーネス設計)でも同じ構図。「あるべき自動化の理想」を先に固めるより、いま何がどこで詰まっているかを signal として拾うほうが先、という話と地続き。ai駆動開発ループ_interview-dev-loop_整理 の「現場は signal 源」と通じる。
2. サーベイ設計 — People / Things / Feelings の3軸¶
| 軸 | 測るもの | 具体 |
|---|---|---|
| ヒト(People) | 回答者属性 | プロダクト・職種・等級 など。後の「偏り可視化」「横断比較」の切り口になる |
| コト(Things) | 開発工程ごとの実態 | 要件定義〜リリースまで 18工程それぞれで、どこまでAIを使えているか |
| キモチ(Feelings) | 主観・環境 | 自己評価・環境整備度・AI成果物への貢献割合(生成物のうちAI由来がどれくらいか) |
- 実施: Google Forms で配信。リマインド戦略で回答率96%を達成(高回答率=母集団の代表性が担保でき、分析の信頼度が上がる)。
- 18工程に分解しているのがポイント。「AI使ってる/使ってない」の粗い二値ではなく、工程ごとの濃淡で見るから施策が打てる。
3. Looker Studio での可視化 — 3つの工夫¶
- 回答者属性の偏りを可視化 — 年度による若手比率・職種構成の変化を把握。母集団が変わると平均値も動くので、属性の偏りを見ないと時系列比較を誤読する。
- プロダクト横断比較 — チーム間のナレッジ差を顕在化。「どのチームが進んでいて、どこが遅れているか」を相対で見せる。
- プロダクトごとの俯瞰ページ — 多忙なリーダーが一目で自チームの状況を理解できるドリルダウン構成。全社員閲覧可能にして部署横断のナレッジ共有を促す。
計測の重要な知見¶
- 定性評価は相対評価バイアスがかかる → 絶対値より時系列追跡が必須。「自分はまだまだ」と答える人が多いのは、周囲と比べた心理によるもの。だから単発スコアでなく経過で見る。
- 仮説検証を怠らない — 「立ち止まっている」と思われた層が、実は十分活用していた、というズレが出る。可視化は仮説を確かめる道具であって、印象を補強する道具ではない。
4. 打ち手の優先順位付け — 定量の次に定性¶
- トップランナーヒアリング: 使い倒している層から、課題と改善案を吸い上げる(伸ばす方向のネタ)。
- 一般ユーザーヒアリング: 障壁を特定し、クリティカルでない課題から消化していく(底上げの方向)。
- 導き出された施策を2分類:
- Quick Wins: 社外ツール申請フローの短縮、開発動画の公開 など(すぐ効く・低コスト)。
- Systematic: AI特化ポータルの構築、セキュリティルールの策定 など(基盤づくり・中長期)。
5. 計測アプローチまとめ¶
| 観点 | 方法 | 効果 |
|---|---|---|
| 定量把握 | Google Forms + Looker Studio | 全社員対象で属性別・プロダクト別の実態可視化 |
| 定性把握 | トップランナー/一般層ヒアリング | 課題のクリティカル性判定と施策の優先順位付け |
| 時系列追跡 | 継続サーベイ設計 | 施策効果を軌道修正ベースで経過観察 |
| アクセス性 | 全社員閲覧可・ドリルダウン | 部署横断のナレッジ共有を促進 |
6. 自分への示唆¶
- AI活用は「導入したか」ではなく「工程ごとにどこまで浸透したか」で測る — 18工程分解は自分のチーム計測にも転用できる発想。二値ではなく濃淡。
- 定量で当たりを付け、定性で優先順位を決める順序。サーベイだけ・ヒアリングだけのどちらでも片手落ち。
- 理想定義より現在地把握を先に — 動かない議論(あるべきAIネイティブとは)に時間を溶かさず、まず測って差分を見せると組織が動く。マネジメント/組織の地力向上の文脈で効く。
作成: 2026-06-27 / 最終更新: 2026-06-27