職種の壁を越えて全員で Claude Code を使う(DeNA)— SDD ワークフローと週次共有会で「テキスト仕様→動く実物」を1〜2日に¶
作成日: 2026-07-18 出典 / きっかけ: DeNA Engineering Blog「エンジニアが仕掛ける『職種の壁を越えたAI活用』。チーム全員でClaude Codeを使いこなす文化と仕組み」(シリーズ「AIジャーニーの足跡」、聞き手: 田邉優斗〈データ基盤部 MLエンジニア・25新卒〉、2026-07-14) https://engineering.dena.com/blog/2026/07/claude-code-team-collaboration/ 関連: smarthr_aiドリブン開発をチームに定着させた話 / エアークローゼット_非エンジニア内製化_sandbox_mcpと議事録rag_整理 / lineヤフー_組織ax_仕様構造化と海外先行事例_整理 / sign_off_layer_ai時代の承認とオーナーシップ_整理 / ミラティブ_ashura_分析民主化aiエージェント基盤_整理 / ai駆動開発ループ_interview-dev-loop_整理
0. 要点(3行)¶
- PdM・エンジニア・デザイナーの3職種が同じ Claude Code の土俵に乗るチームの実践インタビュー。芯は「仕様書というテキストを、AI が読み書きする一次成果物に格上げした」こと。人間が仕様を書き切ってから作るのではなく、超初期に動くモックを出して触りながら仕様を詰めるループに変えた。
- 効いている仕組みは3つ —(1)エンジニア自作の SDD(Spec Driven Development)ワークフローという Claude Code プラグイン(PRD→技術仕様→コード生成を一貫化)、(2)非エンジニアが安全に使えるよう ガードレールを敷いた自作ネイティブアプリ、(3)週1回・職種横断の共有会。ツール配布ではなく「安全な入口+場」で普及させている。
- 最大の学びは「AIありき」で最初から設計せよ。実際は「既存の仕様フォーマットや運用ルールに AI を後付けで“はめ込む”」進め方をしてしまい、AI が理解・作業しやすいルールを最初からトータル設計しておけばよかったと振り返る。効果は「仕様定義→動くもの」が 2週間〜1ヶ月 → 1〜2日、モックは数分で生成、ドキュメントはほぼ人手を介さず最新化(すべて自己申告値)。
1. 誰の・どんな体制の話か¶
記事はインタビュー形式で、1チームの中に PdM・エンジニア・デザイナーが同居し、全員が Claude Code を日常的に使う状態を描いている。個々人の氏名は PdM/エンジニア/デザイナーとして匿名化されている。
| 職種 | 記事内の担当 | AI 活用の要点 |
|---|---|---|
| PdM | 事業者向け管理画面と一般ユーザー向け Web の仕様調整、複数ステークホルダー対応 | 議事録・Slack URL を AI に渡し Notion の PRD を自動更新。仕様変更箇所の洗い出しも AI |
| エンジニア | SDK 開発チーム | 自作の SDD ワークフロー(Claude Code プラグイン)で PRD→技術仕様→コード生成まで AI。GitHub で仕様とコードを同期 |
| デザイナー | チーム3名。UI/UX とデザインシステム整備 | モックの方向性確定後、AI に「Figma のオートレイアウト適用したデータにして」と指示して綺麗なデザインデータを出力 |
聞き手はデータ基盤部の ML エンジニア(田邉優斗、25新卒)。連載「AIジャーニーの足跡」の一本。
2. 何が変わったか — 「テキスト仕様」から「動く実物」へ¶
従来は 仕様を文章で書き切ってから実装していた。AI 導入後は、超初期に動くモックを出し、触りながら仕様を詳細化する順序に反転した。これがこの事例の背骨。
【従来】 仕様を文章で確定 ─────────────→ 実装 ──→ 触って初めて考慮漏れ発覚 ──→ 手戻り
(2週間〜1ヶ月)
【AI後】 ざっくり要求 ──→ 数分でモック生成 ──→ 触りながら仕様を詰める ──→ 実装/デザインデータ化
└ この段階で「ダイアログ外タップ時の挙動」等の細かいインタラクションを潰す(1〜2日)
| 観点 | Before | After(記事の自己申告値) |
|---|---|---|
| 仕様定義 → 動くものを見る | 2週間〜1ヶ月 | 1〜2日 |
| モック作成 | — | 数分 |
| 仕様書(PRD)の最新化 | 人手で反映 | 議事録/Slack を AI が吸い上げ ほぼ人手を介さず最新化 |
| 手戻り | 実装後に考慮漏れ発覚 | 超初期のモックで詳細化し未然防止 |
| デザインデータ化 | 手作業 | モック確定後 AI が Figma オートレイアウト適用データを生成 |
ポイントは 「動くモックを、仕様を固める“前”に出す」こと。触れる実物があると、細かいインタラクション(例:「ダイアログ表示中に外側エリアをタップしたらどう挙動するか」)を早期に潰せる。
3. 仕組みの芯 — 3つの装置¶
3-1. SDD(Spec Driven Development)ワークフロー — エンジニア自作の Claude Code プラグイン¶
「自作した『SDD(Spec Driven Development)ワークフロー』という Claude Code のプラグインを活用して開発しています。PRD や技術仕様書を AI に作らせ、その仕様書を基にコードの生成までをすべて AI に任せる」
- PRD → 技術仕様書 → コード生成を一本のパイプラインにし、仕様書を AI の一次成果物として扱う。
- 仕様とコードのズレ対策として GitHub 上でブランチ管理し、コードと仕様書を同期。「並行開発しているうちにコードと仕様がどうしてもズレていってしまう」課題への打ち手。
補足(一般化・要確認): 「Spec Driven Development」は業界共通の潮流で、GitHub 公式の spec-kit(/specify→spec.md、/plan→plan.md、/tasks→tasks.md、/implement→コード生成、を feature ブランチ+PR で回す)が代表例。ただし記事の SDD は DeNA エンジニアの“自作プラグイン”であり、spec-kit をそのまま使っているとは明記されていない(思想が同系統というだけ。中身は要確認)。cf. 仕様の構造化で先行する lineヤフー_組織ax_仕様構造化と海外先行事例_整理。
3-2. ガードレールを敷いた自作ネイティブアプリ — 非エンジニアの安全な入口¶
「エンジニア側で事前に『ガードレール』を設けた自作のネイティブアプリを提供」
- 非エンジニアが CLI で直接 AI を叩くと「誤って他のプロジェクトを壊したらどうしよう」という心理的ハードル・恐怖心が普及の律速になる。
- そこで エンジニアが事前に安全柵(ガードレール)を組み込んだアプリを用意し、非エンジニアはその中で安全にタスク管理・AI 活用できるようにした。「危険な操作を物理的にできない入口」を先に作るのが要点。
- 同型の設計思想: 非エンジニア内製化を sandbox+社内 MCP で安全化した エアークローゼット_非エンジニア内製化_sandbox_mcpと議事録rag_整理、承認・オーナーシップ層で締める sign_off_layer_ai時代の承認とオーナーシップ_整理。
3-3. MCP で Notion / Slack のコンテキストを吸い上げ¶
「Slack での日々の細かい議論のコンテキストを MCP 経由で AI に吸い上げさせ」「その情報をベースに、GitHub 上の詳細な PRD を AI に自動でブラッシュアップさせていく」
- 議事録・Slack の URL・日々の議論を MCP 経由で AI に渡し、GitHub 上の PRD を自動ブラッシュアップ。人間の転記作業をほぼ消す。
- これにより「PRD の最新化」がイベントドリブン(議論が起きたら反映)に近づく。
3-4. 週1回・職種横断の共有会 —「場」がセットで効く¶
「週に1回、職種をまたいで AI の活用成果や試行錯誤を共有し合える場がセットされていた」
- 仕組み(プラグイン・アプリ)だけでなく 成功も失敗も持ち寄る定例を置いた点が、SmartHR 事例と共通する普及の勘所(→ smarthr_aiドリブン開発をチームに定着させた話 の「週30分 MTG+Slack で暗黙知を移植」と同型)。属人化した“使い方の行間”を職種を超えて配る装置。
4. つまずき・課題(記事が正直に挙げているもの)¶
| # | 課題 | 中身 |
|---|---|---|
| 1 | 細かいインタラクションの考慮漏れ | 「ダイアログ表示中に外側エリアをタップしたらどう挙動するか」等が抜けやすい。→ モックを早期に触って潰す運用で対処 |
| 2 | コードと仕様のズレ | 並行開発でコードと仕様書が乖離。→ GitHub でのブランチ同期+SDD で仕様を一次成果物化 |
| 3 | AI 設計の後付け(最大の反省) | 「既存フォーマットに AI をどう“はめ込むか”」で進めた。最初から「AIありき」でルールをトータル設計すべきだった |
| 4 | Slack で AI が文脈を判断しにくい | 「いまどちらがボールを持っているか」「期限はいつか」を AI が読み取れない。→ Slack 文面の運用ルール化が必要 |
| 5 | デザインの暗黙知 | 「どの画面でどのコンポーネントを使うか」がデザイナー間の暗黙の了解で、ドキュメント化されていない。→ 暗黙知の言語化が課題 |
| 6 | 非エンジニアの心理的ハードル | 「他プロジェクトを壊す恐怖」。→ ガードレールアプリで入口を安全化(3-2) |
5. 一番の学び — 「AIありき」で最初から設計する¶
課題3が記事の核心。要約するとこうなる。
- やってしまったこと: 人間向けに最適化された既存の仕様フォーマット・運用ルールを温存したまま、そこへ AI を“後付けで差し込んだ”。
- あるべき姿: AI が理解しやすく作業しやすいことを前提に、仕様フォーマット・Slack 運用・デザインシステムの言語化までトータルで最初から設計する。
- 具体化の方向: 「人間がゼロから書くことを廃止」し「PRD 作成時に特定のコマンドやスキルを使う」ようにルール化する、Slack 文面を AI が解釈できる形に運用ルール化する、デザインの暗黙知を言語化する。
教訓: AI 活用は「既存プロセスに AI を足す(retrofit)」ではなく「AI が一級市民である前提でプロセスを組み直す(AI-native design)」。後付けは局所最適で頭打ちになる。
6. まとめ — 状況 → この事例の打ち手(早見表)¶
| 局面 | この事例の答え |
|---|---|
| 仕様の手戻りが多い | 仕様を書き切る前に 数分でモックを出し、触りながら詳細化する順序に反転 |
| コードと仕様がズレる | SDD で仕様を AI の一次成果物化+GitHub ブランチで同期 |
| PRD 更新が重い | 議事録・Slack を MCP で吸い上げて PRD を自動ブラッシュアップ |
| 非エンジニアが怖がる | ガードレールを組んだ自作アプリという安全な入口を先に用意 |
| 使い方が属人化する | 週1回・職種横断の共有会で成功/失敗と“行間”を配る |
| デザインが再現できない | デザインシステムを整備し、暗黙知を言語化(+AI に Figma データ生成を任せる) |
| そもそもの設計 | 後付けをやめ、最初から「AIありき」でルールをトータル設計 |
一言で: この事例の新しさは「エンジニアが非エンジニアの安全な入口(ガードレールアプリ)と仕様の型(SDD)を先に用意し、週次の場で全職種を同じ土俵に上げた」こと。ツール導入ではなく “職種の壁を越える足場づくり” が主題。
7. 隣接事例との位置づけ¶
| 事例 | 共通点 | この DeNA 事例の固有性 |
|---|---|---|
| smarthr_aiドリブン開発をチームに定着させた話 | 週次の場で暗黙知を移植/上流をスキルで型化 | SmartHR は開発チーム内。DeNA は PdM・デザイナーまで含む職種横断 |
| エアークローゼット_非エンジニア内製化_sandbox_mcpと議事録rag_整理 | 非エンジニアを安全柵つきで内製化/MCP で議事録を吸う | エアクロは sandbox+社内 MCP 基盤。DeNA は 自作ネイティブアプリでガードレール |
| lineヤフー_組織ax_仕様構造化と海外先行事例_整理 | 仕様を構造化して AI が扱える一次成果物にする | LINEヤフーは全社 AX。DeNA は 1チーム内で SDD プラグインとして実装 |
注意・留保¶
- 本記事は DeNA のインタビュー体験談。数値(「2週間〜1ヶ月 → 1〜2日」「数分でモック」「ほぼ人手を介さず最新化」)はすべてチームの自己申告で、外部検証・定義(母集団・測定方法)は示されていない。
- SDD ワークフローは DeNA エンジニアの自作プラグイン。GitHub の spec-kit と思想は同系統だが、spec-kit を使っているとは明記されていない(実装の中身・コマンド体系は記事に無く要確認)。
- 「ガードレールを敷いた自作ネイティブアプリ」の技術的中身(何をブロックするか、権限モデル、実装スタック)は記事に明記なし。
- 登場人物の氏名・チーム名・プロダクト名は記事では匿名化されている。
参考リンク¶
- DeNA Engineering Blog: エンジニアが仕掛ける「職種の壁を越えたAI活用」。チーム全員でClaude Codeを使いこなす文化と仕組み(2026-07-14) — https://engineering.dena.com/blog/2026/07/claude-code-team-collaboration/
- 同シリーズ「AIジャーニーの足跡」関連: 「AIを個人で使ってるだけじゃ、もったいない——チームの文化として根付かせるための仕組みとは?」(2026-03-05) / 「SQL未経験でも即戦力に?アナリスト組織が挑む『AIネイティブ』な働き方改革」(2026-01-27)
- GitHub spec-kit(Spec-Driven Development の公開ツールキット・一般参照) — https://github.com/github/spec-kit
- Spec-Driven Development with AI(GitHub Blog) — https://github.blog/ai-and-ml/generative-ai/spec-driven-development-with-ai-get-started-with-a-new-open-source-toolkit/
作成: 2026-07-18 / 最終更新: 2026-07-19